- 社名
- アウグスビール株式会社
- URL
- https://augustbeer.com/
- 事業内容
- クラフトビールの製造・販売 、クラフトビール製造の支援・プロデュース(マイクロブルワリープロデュース)
専門家のノウハウと人脈を活用し、地方自治体や行政・地方企業との接点づくりに成功
~クラフトビール醸造所の全国への普及推進を目指して~
取締役COO 村井 庸介様
大学卒業後、株式会社野村総合研究所に入社し、通信業・製造業の新規事業、経営計画策定などの経営コンサルティングに携わる。その後、リクルート、グリー、日本アイ・ビー・エムなどで、法人営業・戦略企画・人事の仕事を歴任。2015年からはメガネスーパーの企業再生で新規事業立 上や事業提携を通じて同社黒字化に貢献。
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課題
マイクロブルワリープロデュースの地方展開にあたり、マイクロブルワリーの導入可能性がある地方企業への接点づくりを強化していきたいが、地方自治体や行政・地方企業との繋がりやアプローチの知見・ノウハウも無い状況。そんな状況の中、いかに効率良く地方企業にアプローチできるかに課題を抱えていた。
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成果
各地域の商工会議所と連携して、マイクロブルワリーの事例説明会を計5回開催。
※2023年6月現在、その中の2社がマイクロブルワリーの導入を検討。
説明会には1回で5社程度の企業が参加し、名所周辺の物販店・ホテルなどのターゲット企業との接点をつくることに成功。
専門家
冨田 裕樹 (とみた ひろき) 様
社長補佐・政府官公庁に対しての営業サポートや、地場の権力者・地方企業とのリレーション構築支援を得意とする。
マイクロブルワリーの地方展開にあたり『Bizlink プロシェアリング』を活用
はじめに、事業概要について教えてください。
当社は、キリンビール出身の坂本(代表取締役)と本庄(醸造責任者)の両名が2004年に創業した会社です。
当時、酒税法改正にともない発泡酒の税率が引き上げられたことで、「第三のビール」が新たな酒類カ テゴリーとして定着してきたタイミングでした。「生活者が本当に美味しいと思うビールを追求したい」という 両名の想いから創業に至り、原料や製法にこだわり抜いた無ろ過生ビール「アウグスビール」の製造・販売を始め、現在は5つの商品を展開しています。
マイクロブルワリープロデュースの事業を始めたのは、どのようなきっかけだったのでしょうか?
生活者に美味しいビールを届けるためには、自社で製造するだけではなく、製造ノウハウを伝えて各地域 でクラフトビールを製造できるようにしたら良いのではないか、と考えたのがきっかけです。 坂本がそのような構想を検討している2018年に私が坂本と出逢い、私主導のもとでマイクロブルワリープロデュースの事業を本格的に始動することになりました。
※マイクロブルワリーとは「小規模でビール系飲料を生産する醸造所」を指し、1994年の酒税法改正以降、 国内でもその数は年々増加傾向にあります。一方で、マイクロブルワリーの導入には醸造免許の取得が 必要であり、導入ハードルは決して低くありません。同社では、免許取得に必要な内容をワンストップで支援することで、国内におけるマイクロブルワリーの普及を推進しています。
マイクロブルワリープロデュースの地方展開を検討したのは、なぜですか?
2022年8月に投資型クラウドファンディングを行ったのですが、非常に反響が大きく、クラフトビールが全国的に注目されているのだと実感しました。それを機に、マイクロブルワリーの導入可能性がある地方企業への接点づくりを強化していくことを決めました。
それまでは、Webサイトを中心に問い合わせ対応や集客活動を行っていたのですが、今回のターゲットと なる地方企業はWebからの流入は見込めないことが分かっていたので、地方自治体や行政との連携を図り、接点をつくろうと考えました。
地方展開にあたって、どのような課題がありましたか?
まず、自分たちに地方自治体や行政・地方企業との繋がりがほとんど無かったことが挙げられます。自社商品の卸先は東京で、一部の商品を共同で醸造している会社は群馬、私の地元も横浜といった具合で、 ステークホルダーが関東圏に留まっていました。 また、地方には東京とは異なる特有の文化・ルール等が存在するため、適切なアプローチをする必要があると感じていましたが、そのあたりの知見やノウハウが無かったことも課題でした。
どのような背景から『Bizlink プロシェアリング』を活用したのでしょうか。
自社に地方との繋がりやノウハウが無かったため、地方自治体や行政・地方企業との繋がりがある方、また地方とのリレーション構築の経験がある方を探していました。そのタイミングで、『Bizlink プロシェアリング』の責任者である高宮さんにサービスのお話をお伺いし、専門家の方をご提案いただきました。
ターゲットとなる地方企業との接点づくりから、逆算した戦略策定
専門家が参画してからの活動内容についてお聞かせください。
初めに行ったことは「ターゲット企業との接点をつくるために、どこから攻めるべきか」の戦略を立てることです。マイクロブルワリーは、店舗等の施設・土地を保有する企業と相性が良いので、そのような地方企業との接点づくりをゴールに、逆算してアプローチ先をリストアップしました。
最初にアプローチしたのは、観光庁が運営する観光地域づくり法人(DMO)です。国内外の観光客の誘致や地域の情報発信などをリードする役割を担っており、全国に登録団体があるため、そこから広げていけないかと考えました。冨田様よりアプローチいただき、興味は持っていただいたのですが、想定するタイムラインと合わなかったため、別のアプローチ先を検討しました。
軌道修正後、どのように進めていったのでしょうか?
次にアプローチしたのが、商工会議所です。商工会議所も全国に団体があり、また所属企業が法人会員しかいないため、相性が良いと考えました。複数の企業にマイクロブルワリーの興味喚起を図るために、 各地域の商工会議所と連携してマイクロブルワリーの事例説明会を開催することを決めました。
どこの地域で開催するかについて、どのように優先順位をつけたのでしょうか。
「観光の名所で、名所の名前がついたクラフトビールは存在するが、地元で製造していない、または観光名所の付近で製造していない地域」を優先的にリストアップしました。マイクロブルワリーは最小6坪から始められるというのが特徴であり、名所に併設することで景観的な引きをつくることができ、また物流費用も削減できるというメリットを提示できるためです。
上記の条件に当てはまる地域をリストアップしたうえで、私の母方の実家があることもあり、1回目の説明会は日光で開催しました。その後、小田原・宮古島・五島列島・淡路島にてそれぞれ開催しました。
冨田様には集客のご支援もいただき、現地に出向いて商工会議所や所属企業に直接チラシを配布していただいたり、淡路島については、地方企業を直接ご紹介いただきました。
自社に不足しているノウハウを活用し、成果に向けた一歩を実現
専門家の活動を通して、どのような成果が得られましたか。
説明会には1回で5社程度の企業に参加いただき、名所周辺の物販店・ホテルなどターゲットとしていた企業との接点をつくることができました。現在、その中の2社がマイクロブルワリーの導入をご検討いただい ています。
1社は小田原の事業者で、農地の跡地を再利用して観光名所にすることで、地域を盛り上げていけないかと構想しています。 もう1社は日光の老舗旅館で、外国人観光客も多い施設なので、ビール工場の併設やクラフトウイスキーの計画等を構想しています。
実際に専門家と活動をした印象を教えてください。
自分にない専門分野を持っている方と活動できたのは心強かったです。地方とのつながりやノウハウが無い中、そのあたりをリードいただいたことで、スピード感を持ってプロジェクトを進行することができました。 私自身、他業務との兼ね合いでなかなかリソースが確保できない場面もあったので、集客周りの支援をい ただいたことも助かりました。
今まで外部の方を活用する機会はなかったので、うまくワークするかといった不安はありましたが、当事者意識を持って動いていただいたので、不安はすぐに払拭されました。
今後の外部人材活用の方針や展望があれば、教えてください。
やりたいことに対してリソースが不足しており、事業の戦略策定からマーケティングや営業の実務までを私が兼任している状況です。マーケティング・営業の領域をまるっと任せられる方が何名かいると、生産性を持って事業規模を拡大できるのではないかと感じています。
専門家より
本支援への参画の決め手を教えてください。
理由は1つというわけではなく、色々な要素が重なって参画を決意しました。
やはり一番は、村井さんの想いに強く共感したことです。ビジネスや事業拡大等の前に、村井さんご自身がとにかくビールがお好きで。「作りたての一番美味しい状態のビールを多くの人に届けたい」という熱い想いに、とても心惹かれました。
また、お話を聞く中で、クラフトビールの市場自体に可能性を感じたことも大きかったです。アメリカでは既にシェアが拡大していて、これから日本にも広がっていくイメージを持てました。私自身、地域や地方企業の役に立ちたいという想いが強くあるので、そういった企業に貢献できる側面があるという点は非常に興味深かったです。
あとは純粋にオリジナルクラフトビールって響きもかっこよくて、おもしろそうだなと(笑)
支援にあたり、大事にしていことはありますか?
アウグスビールさんにとって全てが初めての取り組みだったので、事業展開における村井さんご自身のビジョンをきちんと理解した上で、一緒に動くことを大事にしていました。
こちらが繋ぎ合わせるにしても、私自身が自分の言葉で語れないと価値が伝わらないと思っています。何度も何度も対話を重ねることで、ビジョンや考え方、今後の展望をきちんと理解し、同じ目線で支援することを心がけました。
活動を通じて感じたことや想いを教えてください。
一番感じたことは、地域を何とかしたい・役に立ちたいという若い人がたくさんいるということです。私がいた政界でもそういった場面に出会うことは多かったですが、今回の支援を通じて特に感じる場面が多く、純粋に嬉しかったです。一方で、そういった人々の活動を阻害してしまう悪しき習慣や規制がまだまだあるのも事実なので、そこには多少の悔しさも感じましたね。
村井さんの想いや地域を盛り上げていく活動にとても共感できましたし、今回の支援を通じて気付きも多かったので、こういった想いのある企業様を今後も支援していきたいと思っています。